当事者が伝える「こんなとこにもバリアフリー」買い物編 その1

 脳性まひの車いすユーザーが、生活する中で体験したエピソードとともに当事者目線で身近なバリアフリー情報をお伝えします。今回は日々の買い物についてのお話。私は一人暮らしなので、もちろん自分ひとりでスーパーなどに買い物に行きます。雨が降った時や体調が悪い時などは、ヘルパーさんに買い物をお願いすることもありますけどね。

 

 でも、車いすに乗って買い物をするのって結構大変なんです。何がって、車いすをこぐ時は両手を使います。そうすると当然、買い物かごは持てませんよね。手で持てないので膝の上に載せるんですが、載せているだけで支えられないので、バランスを崩して落としてしまうこともありますし、買い物かごの中に商品をたくさん入れると、重さで膝が痛くなります。

 

 ではどうするかというと、「車いす用ショッピングカート」というものがあるんです。これには車いすとカートを連結するためのクリップがついていて、車いすをこぐと買い物かごを乗せたショッピングカートも一緒に動きます。これがあると、買い物かごの持ち方や重さを気にする必要なく、自由に買い物ができてとても助かります。

 

 ■これは前につけるタイプの車いす用ショッピングカート。正面に車いす用であることを示すアイコンが表示されています。

私の目線から見るとこんな感じです。クリップで自分の車いすと連結できるようになっていて、両手が自由に使えます。

 

 以前にこんなことがありました。私ひとりでスーパーのセールに行ったのですが、私はそのお店に車いす用ショッピングカートがあると知らなかったんです。いつものように、膝の上に買い物かごを乗せて買い物をしていたのですが、その中に卵がありました…もうおわかりですか?そう、皆さんの想像通り、バランスを崩して買い物かごを床に落としてしまい、卵は割れてしまいました。
 お店に行って、好きなように買い物ができないのは悲しいです。この経験もその中の一つですが、車いす用ショッピングカートさえあれば、買い物かごが持てなくても買いたいものが買えて、店内を自由に動けます。その喜び、ありがたさは、こういう残念なエピソードを経験しているからこそ強く感じます。
  車いす用ショッピングカートには、車いすの前につけるものと後ろ(車いすの背中)につけるものの2種類があります。車いすの背中につけるものの場合は、物を入れる時に後ろを振り返る必要があります。この動作を自分でできる人もいますが、これだと介助の必要な人もいます。人それぞれの買い物のしやすさに合ったカートが選べるようになって、多くの人が自由に買い物を楽しめるようになればと思います。

後ろにかごを取り付けるタイプのもの。かごを背負う形になるので、振り返って物を入れなければならず、この動作はできる人とできない人がいます。介助者と一緒に買い物をする場合、介助者にとってはこの方が使い勝手がいいのかもしれませんね。

 

 ただ、車いす用ショッピングカートが利用できるのは、まだ一部のお店のようですね。このカートが置いてあるお店には、バリアフリーマークが表示されていました。車いす用ショッピングカート自体にもアイコンが描かれていて、ひと目でわかるようにはなっています。

 

 そしてこの車いす用ショッピングカートを使えるのは、実は手動の車いすで買い物に行く時だけ。電動車いすに乗っている時には使えないんです。私は電動車いすと手動の車いすの両方を併用しています。電動車いすだと座面が高く大きすぎて、車いす用ショッピングカートと合わずに使えませんでした。お店にはいろんな人が来ますから、それぞれが使いやすいように高さ調整ができるカートがあったらいいな、と思います。

 

 皆さんが行くお店に、車いす用ショッピングカートの用意はありますか?バリアフリーマークはわかりやすい場所に掲示されているでしょうか?買い物のついでに確認してみると、新たな気づきがあるかもしれませんね。

 

建築物のバリアフリーマーク。バリアフリー新法に基づいた建築物の認定を受けた場合は、このマークが掲示されています。