「gente」活用事例紹介 跡見学園女子大学 生活環境マネジメント学科 赤松ゼミ


以前から「gente」を教材活用していただいている赤松ゼミ。
実際の授業と活用状況を取材するため、新座キャンパスへ行ってきました。はたして学生の皆さんはどのように「gente」を読んでくれているのでしょうか。


なぜ福祉住環境を?

 

衣食住と環境について学ぶ生活環境マネジメント学科。赤松ゼミでは2年生の学生10名が、福祉住環境について学んでいます。バリアフリーの住まいやまちづくりについてさまざまな角度から検討する皆さんは、キャンパス内バリアフリー環境についての調査検討などもしています。まずは学生の皆さんに、このゼミを選んだ理由を聞いてみました。

Q.「なぜ福祉住環境を学ぼうと思ったのですか?」

 

A.「住環境に関わる仕事がしたくて。自分たちの暮らしについてはわかっていますけど、その反面、障害者の方たちの暮らしは自分たちとどう違うのか、もっと知りたかったんです」
A.「子どもの頃から車いすや点字の体験展示を見る機会があって、ずっと興味があったんです
A.「住環境に興味はあったんですけど、あまりよく知らなくて。『バリアバリュー』という本を読んで、知らなかったことを新しく学べたのがすごく面白かったので」
A.「私の祖母が車いすに乗っていた時期があって、生活上の不便な面を感じたんです。このゼミで学べばそれを改善していけるのかなと思って」

皆さんそれぞれでしたが、「住環境について学ぶ上で障害者の暮らしについて関心はあったけど、知る機会はあまりなかった」という点では共通しているようですね。日常的に障害者との接点がある学生さんはいないようですし、キャンパス内にも当事者学生は少ないのだとか。それは学びを深める上での課題でもあるようでした。

ゼミ生からの質問

 

今回は「gente vol.016」を読んだ上での検討が授業目的ですが、
その前に編集部への質問の時間を設けてくださっていました。
いただいた質問は

 

Q.「genteの取材制作にあたり心がけている、大切にしていることは何ですか」

Q.「取材対象はどのようにして選定しているのですか?」
Q.「今まで取材して来た中で、もっとも価値観が変わった取材(障害)は何ですか」
Q.「やりがいや、作ってきて印象的だった出来事はありますか」
Q.「今まで障害を持った友達ができたことがなく、なかなか障害者と日常の接点を持つことは難しいなと考えています。どうしたら障害者と普通に出会って仲良くなる世界になると思いまか」

 

など、普段から読者の皆さんによく聞かれるようなものから、こちらがドキッとするようなものまで。いろいろな質問を持ってくださっているのはとてもうれしかったですね。じっくりお答えしたかったのですが、授業本編の時間を使い過ぎてしまっては本末転倒なので手短に。それでも皆さん真剣な表情で耳を傾けてくださり、もっと詳しくお話しできる機会があれば、と感じました。
(「で、なんて答えたの?」とお思いでしょうが、それはその場にいた皆さんだけのものとさせてください。書き出すとキリがないので)

gente vol.016の読後感想共有

さて、いよいよ授業開始です。
まずは皆さん事前に読んできた「gente vol.016」の感想を述べ、共有します。
vol.016では物理的なバリアについても触れていますが、インタビューの柱となっているのは杉﨑さんの障害に対する認識の変化、意識の変化とそれをもたらしたものについてです。周囲の人との関わりや知識によって、自らの障害についての認識が変わり、それにつれて行動も変化していった杉﨑さんの姿から、学生の皆さんはどんな感想を持ったのでしょうか。抜粋にはなりますがご紹介します。

 

■「やってもらっている」と感じてしまっている当事者が、きっと大勢いるんだろうなと感じました。
無意識に障害者の肩身が狭くなるような発言をしてしまっていることはあるんだと思います。
民泊先の方のように簡単なことでも、障害のある人にとって大きな助けとなるとがわかりました。
「障害のある人を助ける」って、当事者にとってはかえって特別扱いに感じるかもしれないと思うと、判断が難しいと思いました。
自然に手を差し伸べるって難しいなと思います。手を差し伸べたいと思っても、考えすぎてしまい迷惑かも」と思ってしまうこともあります。
杉﨑さんの通った福祉教養コースの同級生の皆さんは、人に手を差し伸べるための知識があったから当たり前にできたんだろうと思いました。だから知ることが大事なんだと思います。
今まで「やってあげてる感」を出してしまっていたかもしれない、と思いました。相手に「申し訳ない」と思わせてしまった部分もあったのかな、と思います。
何かをしてあげたい」という気持ちが一方通行で、逆に相手を少し困らせてしまうこともあると思います。
ユニバーサルデザインを取り入れて、心の負担をかけず誰もが使いやすい施設を作ることも大切です。
■学校のエレベーター設置は行政の支援も含め必要ではないかと思います。
■高校生活では自分で移動できるようになったことで、心の負担がなくなったのは当事者にとってとても大きな出来事だったと思います

 

続けて他の学生の意見を聞き、どう感じたかを共有していきます。
こちらも抜粋にはなりますが、皆さんこのような感想を持っていました。

■感謝の強要は負担を作り出していると思いました。

誰もが使いやすい環を学校側が整えていくべきだと思いました。
障害のある方を助けるのは難しく感じてしまうけど、特別に考えず少しの気遣いができるといいなと思いました。
見えないバリアを私たちが作ってしまっていたのかもしれないし、それは私たちが理解していないことが多かったからだと思いました。
ハートはすぐに変えることができるので、私も障害のある方を助けられるようになりたいと思います。
バリアを持った人が「やってもらっている」と感じない世の中にしていくべきだと感じました。
■「自然に手助けができるようになりたい」という感想に共感できました。

「どう振る舞えばいいんだろう?」

やはり皆さん物理的なバリアだけでなく、それがもたらす心の負担についての感想が多く上がりました。そして同時に「心の負担を感じさせないためには何が必要で、どう振る舞えばいいんだろう?」という疑問を共通して持っているようです。
ハートは変えられる、という言葉に共感し「自分も手を差し伸べられるようになりたい」と皆さん口を揃えて感想を述べる一方で「どこまでやっていいのかわからない、自然にって難しい」という意見には皆さん共感していた様子でした。実際にどう行動に移せばいいのか、やはりそこに難しさを感じていのでしょう。困っている方にお声かけをしたいな、と考える方は学生の皆さんに限らず読者の皆さんにも多くいらっしゃると思いますが、いざとなると二の足を踏んでしまうというのはよくわかります。
vol.016を通して「大げさなことでなくてもいい、些細なことでも助けになれる」と学び、ユニバーサルマナーへの関心も持っている皆さんなので、これから少しづつでも知識をつけて、いざという時に行動できる準備は整えられるでしょう。何かきっかけ一つあれば、きっと手を差し伸べられる人になってくれるだろうと期待しています。

グループディスカッション「ブレーキをかけてしまうこと」

感想の共有が終わり、グループディスカッションへと移ります。
赤松先生がディスカッションのテーマとして提示したのが
「ブレーキをかけてしまうこと」でした。
本文中で杉﨑さんが「車いすユーザーだから、と自分でブレーキをかけてしまっていた」という発言に着目し、皆さん自身もういった経験があるのか、あればそれをどう乗り越えたかを考えてみましょう、というもの。幅広く考えられる難しいテーマだけに、どんな議論になるんだろうと思いながら聞いていたのですが、なかなか興味深い内容でした。2つのグループに分かれてそれぞれディスカッションをしていましたが、そのうちひとつのグループで展開された内容をかいつまんでご紹介します。

 

「友達を作るときに結構あるかも。
いきなり自分のことを喋りすぎないように、とか」
という発言を皮切りに、自分がどうみられるのか考えてしまう、発言一つで自分のことを判断されてしまうのでは、などの心配から人間関係を構築する際になかなか踏み込めないのもブレーキなのでは、という議論が展開していきました。
ひとしきり意見が出た後、次に
「新しいことを始めるのに、なかなか挑戦できない」
というのもブレーキなのでは?という発言があり、それについてもまたいろいろと意見が出ていましたが、「挑戦を怖がるのは、自分にはできないだろうという思い込みでブレーキをかけてしまっているのでは」という発言から、ブレーキをかけるのって自信がないからなのかもね、という意見に集約されたようでした。
学生の皆さんは気づいていなかったようですが、杉崎さんがかけていたブレーキもまさにその自信のなさや諦めから来るものだったと思うのです。杉崎さんが「障害が自分の側にある」と思っていた時は、それが諦めや自信のなさを生み出す源になり、結果ブレーキをかけていたのではと思うのですが、もちろん障害がなくたって、自信が持てないことは誰にでもあります。ブレーキをかけてしまう理由のひとつとしての「自信のなさ」は、障害の有無に関わらないんだと気づける面白い議論でした。
「友達作るのだって、小中高と進学するたびに一から友達作って来たわけだし、大学入ってもなんとかなるって思ってたよね」という発言もあったのですが、まさに自信のなさは経験で埋めていくしかないわけで。出た意見を論理的に組み立てるには少々時間が足りなかったようですが、ディスカッション終了後の内容発表では
自信」がブレーキにつながっているかもしれない。経験を積むことで、そのブレーキが解放されていくこともあると思います】
という発言もあり、短い時間の中でブレーキをかけてしまう理由やその対処にまで思いが至ったのが伺える発表で、とても面白かったです。

この続きは「ミライロハウス座談会」へ

この日に話し合われたvol.016の感想やディスカッションの内容は、8月にミライロハウスTOKYOのアルバイトスタッフさんたちと行う座談会で共有されました。当事者との接点を持てていない赤松ゼミの学生さんたちが、自分たちの意見や感想をアルバイトスタッフの皆さんと共有し、何を感じたのか。引き続きこちらの記事からご覧いただけます。

 

赤松ゼミの皆さんありがとうございました。

これからも「gente」を皆さんの学びに活かしてくださいね!