「gente」を配架していただいている、JR田端駅から歩いて5分ほどの商店街にある小さなユニバーサルシアター、シネマ・チュプキ・タバタ。初制作作品「こころの通訳者たち」の試写に行ってきました。
舞台作品において、演者と同じ舞台上でセリフを同時通訳する「舞台手話通訳」。その様子は通訳というより、さながら別の言語で演じるもう一人の役者とも言える存在なのですが、その舞台手話通訳を配した公演の制作過程を描いた「ようこそ舞台手話の世界へ」という短編映画に字幕と音声ガイド(画面が見えない、見えにくい人に向け視覚情報を言葉で補うナレーション)をつけるべく、それぞれの立場の人が試行錯誤を重ねて一つの作品を作り上げていく過程をなぞったドキュメンタリー映画です。
舞台手話、つまり音声言語を視覚言語に翻訳したその様子を、もう一度言語化して表現しようという試み。
視覚言語である手話通訳の様子を音声ガイドに落とし込む、字幕にする。
これがどういうことなのか、その捉え方は観る人の持っている認識によってかなり違ってくるでしょう。それは作中で描かれる、試行錯誤のプロセスを観ていても同様です。ろう者や聴覚障害、視覚障害についての理解や知識によって、その過程への感情はさまざまあるかもしれません。ですが観終わってたどり着くその着地点は、理解や知識によらずきっと同じ場所だろうと思います。
何を伝えればいいのか、どうすれば伝わるのか。
この純粋な、制作に関わったそれぞれが持つ思いを撚り上げ象られた成果として示されるものには、おそらく皆が納得できるでしょう。そして困難な課題にも諦めず取り組む人々の姿は、観る者すべてに共通の思いを抱かせてくれます。
正直なところ、観る前はサブタイトルの「what a wonderful world」はちょっと大げさじゃないか、とも感じていたのですが、観終わったあとの清々しさはそれに値するな、と独りごちて帰路につきました。
見えない、見えにくい人が映像作品を感じ、楽しむための音声ガイド。それ自体について腑に落ちない、理解しがたいという感覚の持ち主のほうがまだ多いだろうと想像できるのが現在地において、この映画が「作品の楽しみ方は自分の知る形以外にもそれぞれある」と気付かせてくれます。そして視覚障害や聴覚障害、ろう、手話といったものへの理解も、感覚的に得られる内容となっています。偶然ではありますが9月発行の最新号「gente
vol.017」とも深く関連のある内容で、読者の皆さまにはぜひご覧いただきたい作品に仕上がっていました。
「こころの通訳者たち」は10月1日よりシネマ・チュプキ・タバタにて先行ロードショー、10月22日より新宿K’sシネマほか全国の劇場にて順次公開予定です。ぜひご覧ください。
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